2022.03.03カトスズ日記②④⑧ 3月3日
ひな祭り
女性の皆様の祭典
そんな日の朝
「Tさんちょっときて!」と呼ばれた僕
スタスタと歩く彼の後ろをついていく
ふと、彼の右手を見ると2m弱のビニール紐が握られている
いったい何に使うのか
一瞬恐ろしい想像が頭をよぎったが
まさかな。と気に留めないことにした
沈黙のエレベーターが屋上階でとまり
扉が開くと同時に差し込む光がとてもまぶしかった
彼は先におりると
傍らに置いてあった緑色の棒を拾い
屋上へと出ていった
紐と棒。いったい何に使うのか
再び恐ろしい想像が頭をよぎる
すくむ足を前に出し
僕はエレベーターをおりた
屋上の端、フェンスの方へと歩く彼
少し距離をあけついていった
フェンス手前で彼は足をとめ
おもむろに緑の棒の先に
ビニール紐を括り付けた
冷たい風に揺れるビニール紐が
悲しそうに手を振っているように見え
悲しい結末を予感させていた
「これ持って、そこ立って」
先端にビニール紐のついた棒を持たされる僕
フェンスまで50㎝の距離だった
屋上の外側を向き立つ僕
背後に彼の気配を感じ
覚悟を決めたその時
カシャ
と乾いた音が響き渡った
「お暇な釣り」(おひまなつり)
「お雛祭り」(おひなまつり)
まさかのダジャレだった(笑)
彼はいつも眉間に皴を寄せて難しい顔でこんなことばかり考えているのか・・・
コロナ禍、僕も将来そんな管理者になりたいと、一瞬思った。
一瞬だけ。
「つつがなく」より